研究概要 |
高温高圧下におけるオリビン中の元素の拡散速度を実験的に決定するために昨年度に引き続きオリビン単結晶および焼結体の合成,MA8型高温高圧発生装置を用いた拡散アニ-ル実験を行なうとともに,新たに回収試料のEPMA分析による拡散プロファイルの測定および求められた拡散プロファイルを解析して高温高圧下における拡散係数の決定を行なった。 オリビン単結晶の合成はCZ法およびFZ法を用いて良質大型単結晶が得られた。焼結体は試薬の定比混合の後,焼結と粉砕をくり返して均一な組成を持つ良質の多結晶体が得られた。 高温高圧実験はMA8型装置を用いてMgオリビンと遷移全属イオンを含むオリビンの混合物を圧力:5ー10GPa,温度:1400ー1600℃の状態に1ー4時間保持した。回収試料から研磨薄片を作成し,光学顕微鏡とエネルギ-分散型X線分析装置つきの走査電顕により観察した。拡散アニ-ル時間が1ー4時間とかなり短いにもかかわらず数+μmにわたってFe,Mgイオンの相互拡散が見られた。この試料をEPMA分析して拡散プロファイルを精度よく求めることができた。拡散プロフィイルの解析から高温高圧下における拡散係数が計算できた。この結果,オリビン中における拡散係数は圧力が高いほど大きくなっており,差応力と水素イオンの存在が拡散速度に大きく影響していることが明らかになった。 さらに衝撃超高圧を受けたケイ酸塩鉱物の微細組織についても研究を行ない,衝撃圧下において元素の拡散を伴なう相転移現象がおこることを衝撃回収実験および天然の隕石試料に見い出すことができた。
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