1.中部地方の火山岩類の放射年代デ-タを収集・整理した。その結果、両白山地においては約5Ma以降、また中部山岳地域(現在の乗鞍岳周辺)においては約2.5Ma以降、火山活動が断続的に起きていることが分った。約5Ma以前についてはデ-タ不足のため不明である。 2.上の結果に基づき、主に年代値の分る岩石試料を採集した。 3.顕微鏡観察により、変質作用を受けていない(またはその程度の弱い)試料を選別した。 4.それらの試料のうちの幾つかについて、岡山大学地球内部研究センタ-のFinnigan MAT 261型質量分析計を用いて、SrとNdの同位体比を測定した。その結果は次の通りである。 (1)未知試料と同時に分析した標準試料BCRー1の分析結果は、 ^<87>Sr/^<86>Sr=0.70490±0.00002、ε_<Nd>=0.02±0.08である。すなわち分析精度は良好である。 (2)約2±0.5Maに形成された上野玄武岩類のε_<Nd>はほぼ0に近い(ー1.8〜+3.0)。 (3)上記の火山岩類は、その殆どがSrとNd同位体比のεプロットにおいて、マントルアレ-の右側に外れる。すなわち ^<87>Sr/^<86>Sr比が高い。いっぽう1Maより若い御嶽山の玄武岩質岩石はマントルアレ-内にプロットされる。故に上野玄武岩類と御嶽山の玄武岩類は、その分布域が重複するにもかかわらず、マグマ根源物が異なる可能性が高い。
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