研究概要 |
イオンビ-ムによるスパッタリングにおいて、固体表面より放出される粒子の運動エネルギ-、荷電状態などは表面第一層の幾何形状、結合エネルギ-、電子状態などの物性を反映している。本研究では、このことを積極的に手法として利用し、単結晶表面構造の解析、特に表面結合エネルギ-を決定することを目的としている。試料としてSi(111)ー√<3>×√<3>ーAg及びAu超格子構造を用いた。これらの系にAr^+イオンを照射すると金属原子は表面から脱離するだけでなく、その一部はSi基盤内部に反跳注入される。この反跳注入の断面積をラザフォ-ド後方散乱法を用いて求め、その解析から表面結合エネルギ-を決定したところ、√<3>ーAgの結合エネルギ-として0.6eV,√<3>ーAuについては2.7eVという値がそれぞれ得られ、約4.5倍の差異が見られた。これは他の研究者によるX線回折や光電子分光の測定結果とよく対応している。√<3>ーAuについては、さらに等温焼鈍法による測定も行い、ほぼ同様の値が得られた。次に、以上の測定とは逆に表面から脱離する金属原子に着目し、そのエネルギ-分布から表面結合エネルギ-を求めることを目的として、中性粒子の高感度検出法であるレ-ザ共鳴電離法の測定システムの拡充整備を行った。用いたレ-ザシステムはXeClエキシマレ-ザ励起の色素レ-ザと、今回新しく購入した2次高調波発生用結晶を組み合わせたものである。実験を遂行する上での技術的な要点は、レ-ザの光軸とAr^+イオンビ-ムの光軸,放出粒子検出器の光軸を正確に一点に合わせることである。このためAr^+イオン照射系の静電レンズ,偏向器及びそれらのコントロ-ラを作成した。これにより光軸の調整は容易に行えるようになった。現在電離容易なFe試料を用いてシステム全体の調整を行っているが、エキシマレ-ザ故障のため共鳴電離実験は中断している状態である。なお、レ-ザの修理は4月中旬に完了する予定である。
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