研究概要 |
本研究で取り上げたIII族原子、V族原子を各々2種を含むInGaAs/Inp超格子構造において原子配列制御されたヘテロ界面の形成のためには、一原子層ごとの成長プロセスにおいて、これまでに研究されているGaAs/AlGaAs系とは異なった種々の検討すべき現象があることが研究を進めるに従い明らかとなった。そこで本研究年度においては、それらの点について詳細に研究し、以下の結果を得た。 (1)InP表面上では、Pを供給しない時、RHEED(反射電子線回折)パタ-ンはP安定化面である(2X4)表面再構造を示すが、350℃といった低温においても表面のP原子の一部の脱離が起こっている。この脱離の程度はInPの温度と無供給時間に依存している。そして、InとPの交互供給において、In供給前に最適な無供給時間を設けることにより、丁度単原子層分のP原子に覆われた状態で次のInを供給することができ、Inの供給量を丁度単原子層分とすることで、理想的な原子配列制御成長が可能である。このような原子配列制御成長により低温で成長したInP膜は、高温において通常のMBE成長したものに比べて同等以上のホトミネセンス発光特性を示し、光学的品質が優れている。 (2)他方、InGaAs表面は、350℃といった低温においては、As供給中、As安定化面である(2X3)構造のRHEEDパタ-ンを示すが、Asの供給を停止すると、InPの場合に比べ1桁以上ゆっくりとAs原子の脱離が起こり、表面のAs原子が不足した状態の(2X4)構造のパタ-ンを示す事がわかった。そこで、In,Ga及びAの交互供給において、As供給時に(2X3)パタ-ンが見えるようにAsの供給量を最適化し、In,Gaの供給量を丁度単原子層とすることにより、理想的な原子配列制御成長が可能である。このような原子配列制御成長により低温で成長したInGaAs膜は、優れた光学的特性を示す。
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