研究概要 |
1.ZnSを母体材料に用いた薄膜電界発光(エレクトロルミネッセンス:EL)素子における発光中心へのエネルギ-遷移過程と添加微量酸素の果たす役割を明らかにするために、発光中心化合物の種類(Mn,TbF_x,TbSF,TbOF)および発光層の成膜条件を変えた素子を製作し、時間分解発光スペクトル、発光過渡特性ならびにEL発光に及ぼすZnSのバンドギャップに相当するHeーCdレ-ザの325nm光照射効果等について検討した結果、次の様に考えることができる。 (1)価電子帯からの電子の供給を枯渇させないことが、電子の衝突励起によるZnS母体の十分なイオン化とそれに引き続く発光中心へのエネルギ-伝達に寄与する再結合に有効に作用する。 (2)等電子的なMnあるいはTbX(X=F,SF,OF)を発光中心として用いることにより、トラップとして、移動度の小さい自由正孔をすばやく減少させる役割を果たし、高輝度化に寄与する。TbOFの効率が良いのは、酸素の電気陰性度が大きいためトラップの捕獲断面積が増加することによる。 2.色純度が良いにもかかわらず十分な輝度の得られていないTm化合物添加ZnS EL素子を各種成膜条件で製作した結果、以下の知見が得られた。 (1)ZnS:TmF_x薄膜EL素子の最適製作条件は、基板温度100℃、発光層中のTmF_3濃度1〜5wt%である。 (2)発光中心にTbOFを用いるとTmF_xに比して多少輝度の増加が観測される。 (3)ZnS母体にTm^<3+>イオンをより良く拡散させるには更に電荷補償イオン(Bi他)の添加が有効である。
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