断続光の吸収熱によって生じる微小金属箔カンチレバ-のたわみ振動を光てこ法によって検出し、カンチレバ-先端に取り付けられた探針に働く原子間力勾配を測定して表面微細構造を観測する原子間力顕微鏡の開発を計画し、平成3年度において次のような知見が得られた。 1.レ-ザ促進エッチング法によってカンチレバ-を製作し、共振周波数のバラツキが少ないことから、加工再現性が充分ある最適なカンチレバ-を作ることができることがわかった。 2.顕微鏡本体の設計製作を行った。微動走査機構には最大変位15μmの積層圧電素子を3軸に組み合わせたトライポッドスキャナ-を、粗動機構にはモ-タ駆動マイクロメ-タを用いた。光てこ法による振動検出には光ファイバによって導入したHeーNeレ-ザ光を用いて0.1nmの振動振幅を充分検出できることがわかった。これらの機構部品を小型高剛性に組み合わせることによって防振性を高めることができた。 3.製作した顕微鏡本体と制御回路、AD、DC変換器、ロックインアンプを接続してパ-ソナルコンピュ-タによる制御を試み、作動することを確認した。また、顕微鏡によって得られた3次元数値デ-タを2次元、3次元画像に表示するためのソフトウェアを製作した。 4.以上のシステムによって、構造の知られた非導電性試料(光磁気ディスク基板、ラテックス球)の観測を試み縦分解能、横分解能がそれぞれ2nm、50nm程度であることが判った。 5.さらに、開発した顕微鏡を用いて絶縁膜に帯電した電荷分布の観測を試み明瞭に観測できることがわかった。また、絶縁膜を用いて探針に電圧を加えて電荷を帯電した後、顕微鏡によってその電荷分布を観測することにも成功した。
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