研究概要 |
本研究の目的は量子相関をもつ光子対を用いた光計測法の開発である.光子対は従来の古典的な光には見られない特異な性質を持っており,新しい計測・通信への応用が期待されている. 本年度はまず,光子計数法を用いた2波長干渉計を作成し,高次相関を利用して波長の異なる光子間の干渉実験を行なった.この場合,光子間には量子相関は存在しないが,周波数差に相当する空間的うなりが観測された.4次の相関をとるために通常はコインシデンス法が用いられるが,本研究では,2つの光電子計数率を非線形演算することにより同様の結果が得られることを明らかにした.光源として量子相関をもつ光子対を用いれば,周波数の和に相当するうなりが観測されるはずである. パラメトリック過程で発生する光子対の片方を観測すれば,残りの光子は個数固有状態(1光子状態)になる.このような個数固有状態の別の生成方法として,仮想遷移によるライトシフトを用いた光子数の非破壊測定の基礎実験を行なった.透過型光検出が可能になったが,量子的微弱光にこの方法が適用できるかどうかは今後の課題である. 最近,BerkeleyのChiaoらは光子対を用いて1光子状態に対するBerryの位相を測定した.このような量子領域におけるBerry位相と古典的な光に対するBerryの位相との関係に関する理論的研究も行なった.
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