研究概要 |
本年度は主にパラメトリック過程で生成された光子対に関する理論的研究を行なった.従来,光子対の研究は場の量子論を使って行なわれることが,殆んどであった.しかし,場の理論で2光子相関や干渉に関する直観的抽像を見ることはそれほど容易ではない.そこで,ここでは2光子の波動関数を導入し,2次元配位空間上の波動象像として2光子相関を捉えることを試みた.とくに,ボ-ズ粒子としての性格を考慮するためLeinassーMyrheimの対称化の方法を用いた.このような手法により,通常の方法では直観的に理解因難な種々の2光子相関現象を統一的に,しかも簡単に記述できることが明らかになった.原理的には2光子の波動関数による記述は場の理論のFock空間をn=2に限定したものに過ぎないが,予想外に有用であることがわかった.これは,様々なタイプの状態の縺(entanglement)が明示的に表記されるためである.また,2光子のうち1つを観測することにより得られる1光子状態は一般に混合状態になるが,これに対しても直観的理解が可能である. 光子の個数固有状態の生成方法としては,上述のパラメトリック過程によるものの他に,光子数の量子非破壊測定によるものがある.本研究では,量子非破壊測定の1方法を提案し,その予備的実験を行なった.その方法は偏光した信号光による原子の仮想遷移の反作用としてのレベルシフトを磁気共鳴信号のずれとして観測するものである.アルカリ原子を用いた実験の結果,古典的レベルの信号光を非吸収的に測定することができた.
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