熱散漫散乱によるビ-ムの薄膜試料透過率の変化を利用すれば、試料上の温度が計測できる。電子ビ-ム源として電子顕微鏡を利用することにより、高い空間分解能が得られる。これに半導体レ-ザ-による局所加熱を組み合わせると、薄膜の熱伝導率が計測できる。これには次の2つの方法がある。 (i)局所加熱時の薄膜上の温度分布を測定し、その温度上昇値より熱伝導率を計算する。 (ii)熱源強度を正弦波で変調し、観測定での温度の熱源よりの位相遅れから熱伝導率を計算する。 本年度は後者の方法を採用し、検討した。これには次のような利点がある。 (1)熱伝導率の導出に試料温度上昇の絶対値が不要である。 (2)試料の膜厚、レ-ザ-光の吸収率、レ-ザ-出力に依存しない。 (3)電子ビ-ムプロ-ブを用いるので、試料上で計測位置を自由に移動できる。 (4)高倍率で像を観測しながら計測できる。 (5)大きな寸法の薄膜を必要としない。 しかし、次のような欠点もあった。 (6)電顕内で、集点レ-ザ-光の軸と電子ビ-ム、対物レンズの軸を合わせる必要がある。 (7)位相遅れと熱伝導率の関係は、レ-ザ-ビ-ム径やその強度分布に依存する。 今回の測定デ-タはばらついたが、蒸着アルミ薄礎(〜200nm)の熱伝導率はバルク試料のそれのほぼ1/3の約80W/mkとなった。測定精度は、今後レ-ザ-照射装置を改良することにより、改善される見込みを得た。
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