今年度(平成3年度)は、平成2年度に試作したパ-ソナルコンピュ-タによる両眼視差図形提示システムを用いて、主に、ワイヤ-フレ-ムおよびランダムドット視差図形に対する融像時間を心理物理的およびEOG法による眼球運動に基づいて検討した。また、疲労評価に関しては、調節応答ばかりでなく、眼球運動による評価が可能なことを確認し、量的検討段階に達した。なお、今年度明らかとなった諸点は以下の通りである。 1.図形的奥行きの手がかりがあるワイヤ-フレ-ム視差図形においては、交差性(正:飛出し状態)、非交差性(負:引込み状態)にかかわらず、融像時間は±2度の視差範囲内でほぼ一定値(約0.3秒)を示し、それ以上では注視点移動による時間延長が認められる。 2.図形的奥行きの手がかりがないランダムドット視差図形においては、融像時間は±2度の視差範囲内でも相関探索(両眼の対応図形成分の抽出)に要する時間延長が認められる。 3.融像時間の延長要因は、基準枠と浮き出し図形の空間間隔(図形的手がかりあり)およびそれらのサイズ比率(図形的手がかりなし)であり、これらが同一ならばどの視差図形でも融像時間は一定値となる。 4.ワイヤ-フレ-ム図形に対する60分間の平面視作業と立体視作業(3次元空間でのマウスカ-ソルによるポイント指示)においては、共に眼疲労の誘発が認められるが、特に立体視作業時でその傾向が顕著(約2倍)である。なお、視作業後の回復経過は、両者でほぼ同等である。 今後は、計画遅れとなった画像のちらつき頻度とコマ間の視差変化量に対する眼疲労の評価およびランダムドット図形に対する視覚誘発脳波の変動特性を主に検討する。
|