パーソナルコンピュータを用いた赤・青アナグリフ方式および液晶シャッター(時分割)方式による両眼視差図形提示システムを試作し、ワイヤーフレームおよびランダムドット視差図形を用いて、両眼視差による融像時間、眼球運動、調節応答および視覚誘発脳波を検討した結果、立体視における視覚疲労に関して以下の諸点が明かとなった。 1.融像時間の変動特性は両眼視差の相対的な変化量ではなく、絶対的な視差量そのものに依存している。 2.図形的奥行き手がかりのあるワイヤーフレーム視差図形では、融像時間は±2度の視差範囲内でほぼ一定値(約0.3秒)を示し、それ以上では注視点移動による時間延長が認められる。 3.融像時間の延長および点視標に対する眼球運動の追従遅れ時間が、眼疲労に深く関連する。 4.ワイヤーフレームおよびランダムドット図形に対する平面視作業とマウスカーソルによる立体視作業ともに眼疲労の誘発が認められるが、特に立体視作業時でその傾向が顕著(約2倍)である。 5.立体視標の提示方式による眼疲労は、アナグリフ方式では主に毛様体筋の働きである調節速度が低下し、内眼筋疲労が強く生じていると考えられる。また、液晶シャッター方式では、調節速度の低下とともに調節反応潜時が顕著に延長した。それゆえ、画像のちらつきによって、内眼筋疲労と共にそれ以外の要因(神経系の疲労)が誘発されると考えられる。 今後、画像のちらつき頻度とコマ間の視差変化量に対する眼疲労の評価、さらに人工現実感状況での生理的反応の評価が重要になると考えられる。
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