我々は、光学系や観察対象物自体に能動的な「変調」を加え、その結果の「変調された」観察画像を正負荷重付き画像積分することで、必要な情報を抽出する「実時間能動型画像処理方式」を提案している。本研究はこの能動型画像処理方式を光学顕微鏡や電子顕微鏡等の光学系に応用し、従来の「静的」な結像光学系では実現困難であった新しい結像特性を作り出す、「能動型合成結像法」の確立をその目的とする。 平成2年度においては、光学系の3次元光学伝達関数に基づく基礎理論を体系付けた。これと並行して市販光学顕微鏡を改造した実証光学系を試作し、3次元画像収集解析システムを用いて3次元パワ-スペクトルを実測する事で、実効的な伝達関数の「合成」が可能であることを確認している。さらに透過型電子顕微鏡分野についても、この画像収集解析システムを用いて、初めて3次元パワ-スペクトルを得ることに成功した。これらの知見から透過型電子顕微鏡においても光学顕微鏡と同様に能動型合成結像法が適用可能であるとの結論を得ている。 平成3年度においては、焦点移動平均を利用した無球面収差結像が能動型合成結像法によって実現できる事を示し、生物試料等の観察により実用性の評価を行った。さらに、フレ-ム内荷重付け画像積分とフレ-ム間連続画像減算器を用いた実時間(2ー4TVフレ-ムレ-ト)能動型合成結像システムを試作し、光学顕微鏡による位相板を用いない位相物体観察に適用、実時間での観察が可能である事を確認した。本システムは電子顕微鏡の実時間球面収差除去に適用すべく光学顕微鏡での予備実験を継続中である。一方透過型電子顕微鏡日立HFー2000を用いて、非実時間のデフォ-カス変調型球面収差除去処理を試みた結果、従来分解能に比べ、1.6ー1.7倍もの改善が確認された。今後電子顕微鏡制御系の高速化をはかる事で、実時間化を計りたい考えである。
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