新しく航空機を開発する場合の設計の手順は、まず計画要求によって与えられた性能と、航空法規によって課された制約条件(その多くは、安全確保のために要求される非常時の機体性能の最低限界である)を両立させる機体規模の決定作業から始められる。これを概念設計と呼んでいるが、これは既存の機体の統計データ等を頼りに、試行錯誤の繰り返しによって進められるのが普通であった。 近年の計算機の発達にともない、小型の卓上型計算機においても計算速度とその使い勝手が改良され、概念設計の段階からこれら小型計算機の助けをかりる事によって、かなりの詳細な機体性能にたいする考察を加えながら、手軽に機体諸元を決定していく事が可能となりつつある。しかし、既存機体の統計的データをいっさい使わずに設計を進めるに至るまでには、今だ計算機の計算速度も記憶容量も不十分であるし、設計手順に工夫しなければならない点も少なくない。この研究では、近い将来の計算機能力の発展を前提として、ひとまずは手元にあるワークステーションを使用して、概念設計の手順を合理化するために必要となるであろう機体諸元をあらわすパラメータを、パネル法で計算した空力性能を頼りに最適化する事を試みた。始めに主翼形状を考察し、次に胴体形状の最適化に及んだ。航空機主翼及び胴体形状に対していくつかの有益な知見を得た。また更に、古典的な既存機体の統計データを利用する概念設計の手順を、パーソナルコンピュータの中で行うことも試みられたが、使用言語がBASICであったために、ワークステーションで開発された最適設計プログラムと最後に組み合わせるにはいたらなかった。
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