研究概要 |
本研究はMeV級の高エネルギのパルスイオンビ-ムを用い、金属材料を始め各種工業材料、特に金属チタン表面の表面にB,NあるいはCa,Pイオン等を注入し、その材料表面の改質、向上を計ることを目的とするもので、長岡技術科学大学に設置の装置を用い、同大学の関係教官の協力を得て実施を進めているものである。 本研究では、イオン源をアノ-ドに貼付けた厚さ約1mmのBN焼成板、またはアバタイトの焼成板とし、ダイオ-ド電圧、電流をそれぞれ、540,740KeV,1036kAの条件に選び、金属チタン板をタ-ゲットとして、イオン注入、照射を行い、その効果を金属チタン表面についてx線解析による定性分析あるいは熱的残留応力の計測、ESCAによる半定量的分析等、色々な分析方法を積極的に活用し、多面的に評価、検討を加えて来た。その結果、金属チタン表面へのアパタイト皮膜の形成に付いては相応の成果を得、電極電位の測定からも耐食性の改善、向上を裏付ける資料を得る等の成果を得ている。しかし、パルスイオンビ-ムの発生とその利用、に関わる本装置に特有の特徴が時にはマイナス効果としても表れ、安定的なイオン注入を進めるについては、再現性の点でやや問題が残ることが分かった。そこで、本年度の研究では改めて装置の特色を再検討し、高エネルギ密度の照射条件をやや緩和する態様で実験的検討を進めた。再検討の結果、結論的には照射効果を上げる条件の元ではパルスイオンビ-ムのエネルギ密度が高いことの特色は生かせるものの、照射面の温度が瞬間的とは言え、金属チタンの融点を遥かに越える高温度に到達し易い事が計算、実験的検討の両面から確認出来、パルスショットの効率的回数の検討を含め、パルスイオンビ-ムの効果的利用を計る上ではビ-ム密度等、更に一歩踏み込んだ照射条件について系統的実験を進める必要性を認めている。
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