研究概要 |
純チタンを電子ビ-ムで蒸発しながら60キロ級高張力鋼表面に蒸着すると同時にNガスをイオン化したNイオンビ-ムを照射することによって鋼表面にTixNのニュ-セラミック薄膜を創製した。この薄膜の創製は加速電圧,チタン蒸着速度,イオン電流密度などによって変えることができる。そこで,まずチタン蒸着速度を一定にし,イオン電流密度を変えて,各種のTiN膜を創製した。TiN膜の組成はイオン電流密度が高いほどTiN単体となり,それが低いとTiNとTi_2Nの混合組成となっていた。このTixN膜の組成によって薄膜の硬度が変化した。しかし、同一組成のTiN膜であっても薄膜の硬さに変化がみられ,TiNとTi_2Nの混合組成とTiN単体の境界付近で最も高い硬さを示した。これに伴って疲労寿命にも変化が生じた。すなわち,疲労寿命はTiN薄膜の被覆によって改善されるが,その程度は応力レベルに強く依存して変化し,応力レベルが高いほどその効果は少ない。TiN膜の被覆は疲労限を約30%上昇させた。次に,TiN膜の組成を系統的に変えてTixN膜を創製した。その結果TiN膜の組成が,TiN単体からTi_2Nの混合割合が30,50,80%とほぼ所定の割合で存在する組成の薄膜が得られた。この場合,薄膜の硬さは,TiN単体のものが最も高く,Ti_2Nが混入するほど軟らかくなった。これらの薄膜の被覆が疲労寿命に与える影響は,上述したように応力レベルに依存しており,応力レベルが低いほど改質効果がみられた。そして,TiN単体のものが疲労寿命を最もよく長くさせる効果があった。TiN薄膜被覆が疲労寿命改善効果がはっきりしたので,薄膜の厚さの効果を確めるために,2,4,6μmに変えたTiN膜を作り,その効果を調べた。その結果,膜厚が厚いほど,疲労寿命に改質効果がみられた。
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