有限要素法は各種機械類、輸送機器等の構造解析に広く適用され、合理的な設計や開発に役立っている。非線形有限要素法の高精度に寄与する検討事項として、構成式、変分原理を取り上げ、これらの因子そのものとこれらが有限要素法を用いた数値解析に及ぼす影響を検討する目的で、本研究を平成2年度から平成4年度までの3ヶ年で実施した。 亜弾性体は微分形構成式として定義されたもので塑性を伴う金属材料の挙動に用いられ、超弾性体はポテンシャルから構成式が定式化されゴムなどの材料の挙動を表現するのに用いられる。従来広く用いられているJaumann形亜弾性体は線形移動硬化則を用いて単純せん断問題を解析すると、応力・変形曲線に通常では予期されないような振動現象が生じる。また超弾性体は従来、初期配置に基づくGreen-Lagrangeひずみが用いられているが、単純せん断問題のせん断応力が変形に遅れる現象を正確に予測することができない。また超弾性体では変位と圧力を未知数とする混合形変分原理が提案されているが、座屈現象に重要な影響を与える初期応力項が含まれていない。 以上の問題点を解決するため、以下のような事項に分けてそれぞれを重点的に検討を加えた。 (1)有限変形のひずみ尺度として、一般化対数ひずみと見なすことのできる非回転ひずみを用いた超弾性体構成式の定式化。 (2)亜弾性体の共回転構成式と非共軸性の理論的検討。 (3)内部時間理論に基づく非回転ひずみを用いた大塑性ひずみ構成式の定式化と実験との比較。 (4)初期応力項を考慮した超弾性体の混合形変分原理とその解の安定性。 (5)非回転ひずみを用いた亜弾性体と超弾性体の大変形弾性解析。
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