研究概要 |
本研究では,2種類の薄板鋼材S50C及びHT50(ともに板厚1.6mm)を供試材として検討した.実施した混合モ-ド試験法は,研究者が提案した中央き裂材を用いる斜め負荷方式によるものである.試験はインストロン型試験機を用い,クロスヘッド速度3.0mm/minの条件で行った.リガメント幅の影響を調べるために試験片の板幅を70mmとして板幅き裂長さ比を0.3,0.5,0.7と変えたものと,板幅き裂長さ比を0.5として板幅を42mm,98mmと変えたものを製作して実験を行った.それぞれの試験片について,延性ーぜい性遷移温度を中心に試験温度ならびに混合モ-ド比(モ-ドI成分とモ-ドII成分の比)を変えて,き裂進展方向,最高荷重条件,ならびにへき開破壊を示す最高温度などの遷移挙動について検討した.本研究の実験範囲で得られた主な成果は以下の通りである。 1.両供試材とも,遷移温度域において延性き裂進展後へき開破壊を示す場合のへき開き裂の発生方向は,板幅及び板幅き裂長さ比によらず最大接線方向応力説にほぼ一致する. 2.両供試材とも,遷移温度域において延性き裂進展後へき開破壊を示す場合の最高荷重点のミ-ゼスの相当応力は,板幅,板幅き裂長さ比,及び混合モ-ド比によらずほぼ一定である.すなわち遷移温度域の最高荷重条件は第一近似としてミ-ゼスの相当応力=一定として表せる. 3.へき開破壊を示す最高温度(本研究では延性破壊のみを示す最低温度と,延性き裂進展度へき開破壊を示す最高温度の範囲として表示)は,S50Cの場合はモ-ドII単独の方がモ-ドI単独より約80℃低温側にあり,板幅,板幅き裂長さ比によらずモ-ドII成分が増加するにつれて低温側に移行する.一方HT50の場合は,板幅,板幅き裂長さによらず混合モ-ド比に対してほぼ一定である.
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