研究概要 |
まずはじめに,ステンレス鋼(SUS304),炭素鋼(S25C)それぞれについての基本的変形挙動を把握するために,引張りおよびクリ-プ実験を実施した。その結果,ステンレス鋼は室温でも塑性流動応力のひずみ速度依存性が顕著であることがわかった。また,この挙動は超過応力概念に基づく粘塑性構成式によりよく表現できることがわかった。炭素鋼については,塑性流動応力のひずみ速度依存性はステンレスでみられるものと比べ小さいことも明らかとなった。 ステンレス鋼と炭素鋼のそれぞれについて,内圧と引張・圧縮を組合せたラチェット実験を実施した。この結果より,それぞれの材料のラチェット変形挙動についてはおおむね特性が明らかとなった。ただし,いくつかの弾(粘)塑性構成式(塑性・クリ-プ単純重ね合せ型,Kremplモデル,Chabocheモデル)によるラチェット変形の数値シミュレ-ションも実施したが,いずれの構成式による結果もラチェットひずみ累積量の実験結果とは一致が不十分であった。 ステンレスを内層,炭素鋼を外層とするステンレスクラッドパイプを作成し,その基本的特性について調査した。単軸引張りについては,おおむね,いわゆる複合則(ひずみ一定仮説)でその応力・ひずみ関係が表現できることがわかった。また,ラチェット実験についても一部着目したが,まとまった結果を得るには至っていない。今後,この点について実験を追加し,クラッドパイプのラチェット挙動についての数値シミュレ-ションと比較・検討を行う予定である。
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