研究概要 |
電子ディバイスの性能と関連して,GaAs,InP等のバルク単結晶作成プロセス(CZ法=チョコラルスキ-法)において転位密度をいかに低く抑えるかが問題となっている。転位生成には,作成時に生じる熱応力が大きな影響を与えることが知られている。これまで行わている熱応力解析は,解析が簡単となるように材料の等方均質性を仮定し,材料定数値の温度依存性を考えないで行われている。本研究では.機械物性値の温度依存性,弾性係数の異方性を考慮した三次元体に対する熱応力解析プログラムを有限要素法を用いて作成した。この熱応力解析プログラムには,任意の結晶引き上げ方向の場合の弾性係数マトリックスが必要となるが,これをテンソル変換の手法により求めた。また.転位密度と熱応力との関係を考察するために必要となる転位密度評価値として分解せん断応力と臨界分解せん断応力の差分として定義されるб_<ex>を採用し,これを熱応力解析結果から計算できるようにした。さらに,バルク単結晶体の任意の縦断面および横断面において、応力成分あるいは転位密度評価パラメ-タの等高線分布を図化するためのポストプロセッサプログラムも作成した。このようにして作成された解析プログラムにより,CZ法による単結晶作成条件の伝熱解析から求められた温度分布を用いたGaAsバルク単結晶体の熱応力解析を行った。本解析では,等方弾性体を仮定した場合の熱応力解析も行い,弾性係数の異方性を考慮した場合の解析結果と比較した。その結果,応力成分および転位密度評価パラメ-タに関して,それらの値および分布パタ-ンに両者の解析の間で有意の差異が認められた。このことより,弾性係数の異方性を考慮した三次元解析の重要性が立証された。
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