研究概要 |
電子デバイスとして用いられる代表的な単結晶であるSi,GaAs,Inpのチョクラルスキ-法による育成過程に生じる熱応力を、引き上げ方向が[001]と[111]の場合について求めた。解析には弾性係数の異方性を考慮した3次元有限要素解析プログラムを用いた。熱応力解析より求められた応力成分をすべりに対して有効な応力の尺度δtotに変換した。{111}面内のヤング率とポアソン比を用いて,バルク単結晶体を等方弾性体と仮定した解析も行い、異方性解析の結果と比較した。その結果,次のことがわかった。(1)引き上げ方向が[001]の場合には,等方性解析は異方性解析よりも高いδtotの値を与え,両者の差異は異方 性の程度を表すパラメ-タと相関がある。(2)引き上げ方向[111]の場合には等方性解析と異方性解析の差異はδtotの値ではなく,その分布パタ-ンに強く表れる。 6インチ,8インチといった工業規模の大口経Siバルク単結晶の10解時間余りにわたるチョコクラルスキ-法による育成過程の熱応力解析を前記の有限要素法析プログラムを用いて行った。また,熱応力解析に必要な単結晶体の温度分布およびその形法は,非定常伝熱解析プログラムにより求めた。熱応力解析より求めた応力成分より転位密度評価パラメ-タを求めた。その結果,下記のような工業上有用な結果が得られた。(1)転位密度評価パラメ-タの最大値は,固液界面近傍の底面中央部あるいは側面部に生じる。(2)界面のくぼみ深さと転位密度評価パラメ-タの間には明らかに相関が見られる。(3)[111]引き上げの方が[001]引き上げよりも転位密度評価パラメ-タの値が小さい。
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