研究概要 |
本研究は,理論上流体潤滑作用が生じない等速逆回転が可能な2円筒摩擦試験機により,荷重ならびにすべり速度を自由に変化できる境界潤滑モ-ドを作り出し,その状態において表面粗さによる流体潤滑作用の影響を実験的に明らかにすることを目的として行なった。 1.試験装置の設計・製作:予算の関係上,現在保有している2円筒ころがり・すべり試験機を,試験円筒の交換が容易でかつ運転中に接触部の観察が容易なように改造し,また摩擦力の測定には測定系の検出感度を下げずに剛性を高めるために,ピエゾ圧電式の荷重変換器に変更した。その結果安定した再現性のよいデ-タが得られるようになった。 2.実験結果表面粗さの高さと方向が異なる数種類の試験片の組合せについて,潤滑油の温度・荷重・すべり速度を変えて,摩擦係数とすべり率の関係を調べた結果,(1)見掛け上流体潤滑作用が生じない等速逆回転すべり状態において,摩擦系数は油温・相対すべり速度および荷重の影響を受けること,(2)すべり率があまり大きくなければ粗さが小さい方が摩擦係数は小さいが,すべり率が大きくなると逆に粗さが大きい方が摩擦係数は小さくなること,(3)粗さの大小を組合せた場合には,粗い方の円筒を高速側にした方が摩擦係数は小さくなり,逆回転時に両者の差が最も大きくなること,(4)充分なじんでいれば,クロスハッチ粗さの場合の方が円周方向粗さの場合より摩擦係数は小さくなるが,充分になじんでいなければ逆になること,などがわかった。3.反省:装置の改造ならびに試験片の準備に予想以上の時間を要したため,当初の計画にあった「付着油膜量の影響」については実行できず,境界潤滑モ-ドにおいて表面粗さによる流体潤滑効果の存在を実証するまでには致らなかった。なお今後の実験については,この実験専用のより高精度の実験装置並びによく管理された表面粗さをもった試験片を用いて行う必要がある。
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