約463Kで浸硫処理した鋼球及び歯車に関する四球試験及び歯車試験を行い、浸硫被膜の摩擦特性、焼付き強さ及びスコーリング強さを明らかにし、四球試験と歯車試験による試験結果の相関性について検討を行った。これらの試験結果より下記のことが明らかになった。浸硫処理を施した鋼球の場合の焼付き強さ及び歯車対の場合のスコーリング強さは未処理の鋼球及び歯車対の場合と比して1.5〜2.0倍大きく現れる。この傾向は四球試験の場合の焼付き強さとほぼ同様であり、四球試験による焼付き強さと歯車試験によるスコーリング強さのそれとの相関がかなり認められる。浸硫処理を施した場合、浸硫処理にともなう歯先修整効果により動荷重が減少し、歯車騒音は著しく減少する。特に、浸硫処理歯車を駆動側あるいは被動側のいずれか一方に使用した場合が歯車騒音の低減に極めて効果的である。また、潤滑油の粘土の上昇に伴ってスコーリング強さは上昇する。 一方、すずめっき後、約680Kで熱拡散処理したステンレス鋼球に関する油浴潤滑及び乾燥摩擦の場合における四球試験結果より、下記のことが明らかになった。油浴潤滑の場合では、摩擦係数はすずめっき熱拡散処理層(以下、拡散層と称する。)の厚みが増加するにつれて低下し、焼付き強さは拡散層の厚みの増加にともなって上昇する。拡散層の厚みが8μmの鋼球の場合の焼付き強さは未処理球のそれに比して約2.6倍上昇する。また、乾燥摩擦に場合では、拡散層の厚みが4μmを超えた処理球の焼付き発生までの運転時間は拡散層の厚みに無関係でほぼ5min一定であり、拡散層がない場合のそれと比して著しく上昇する。
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