研究概要 |
吹出しは境界層を制御するための手段として多くの分野で用いられ,流体機械や翼などの性能向上に大きな寄与をしている。本研究では,レイノルズ数を2種類,吹出し速度比を3種類変化させて,吹出しを伴う二次元チャネル内乱流の乱流構造を実験的に解明することを目的としている。実験にあたっては,吹出し開始前から吹出し開始点近傍,さらに十分発達した領域までの合計10個所の流れ方向位置において速度分布,静圧分布,乱流エネルギ-,レイノルズ応力などの測定を行った。それらの結果より,吹出し速度が小さく加速度パラメ-タの値が逆遷移が発生すると従来からいわれている約3×10^<-6>以下の場合には吹出しの影響はあまり観察されないが,吹出し速度が大きく加速度パラメ-タの値が臨界値を越えた場合には吹出しの影響が顕著に現れ,速度分布は壁面近くで減速するとともに壁面せん断応力も小さくなることが明らかとなった。また,乱流エネルギ-,レイノルズ応力は特に壁面近傍で急激に減少し,再層流化傾向が認められた。ついで,乱流の構造を明らかにするために代表的な数個所の位置において乱れのパワ-スペクトル,自己相関関数,確率密度関数などの測定を行った。パワ-スペクトルの測定結果からは吹出しにより低波数領域のエネルギ-の寄与が増大することが判明した。確率密度関数については,壁面から離れた領域では吹出しによる影響はほとんど認められないが,壁面近傍では分布の非対称性が増し,スキュ-ネスの値が大きくなる現象が観察された。これは,壁面近傍の組織的構造であるバ-スト現象が吹出しにより変化していることを示唆している。今後,測定個所を増やして乱れの統計的性質を明確にするとともに,乱れやレイノルズ応力の生成に非常に重要な役割を果しているバ-スト現象を解析することにより,吹出しを伴う管内乱流の乱流構造を解明する予定である。
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