滴状凝宿は膜状凝縮に比べ数十倍の熱伝達率を有するが、その安定性や寿命に問題がある。幾つかの高分子被膜が有望視されているが、十分な寿命をもたせるにはかなり厚い被膜が必要で、これは熱低抗となって全体の凝縮性能を大きく増大させることを困難にしている。本研究は、滴状凝縮部分と膜状凝縮部分を同一伝熱面に交互に配置した共存凝縮伝熱面が、両者が単独である場合の平均よりも高い伝熱性能を示すことに着目し、厚い被膜ながら安定な滴状部分の共存により、積極的に膜状部分の熱伝達を促進し、高性能凝縮伝熱面を得る可能性を検討したものである。 まず、同一伝熱面上に滴状と膜状の熱伝達率の異なる部分を共存させた場合の伝熱面および伝熱ブロック内部に生じる温度分布のゆがみの影響を熱伝導計算により求めた。両者の面積割合が同じでも温度分布は両者の分布方法によって変化し、平均熱流束も変化する。両者を細かく分割して分布させるほど平均熱流束は増加する。 滴状、膜状各部分の伝熱特性を同時に測定し、表面での干渉の影響を調べたところ、滴状部分の熱伝達は滴の掃除効果の減少でやや劣化するが、膜状部分は滴状部分から突入滴が引き起こす激しい乱れにより大きく伝熱が促進される。この乱れの強さは滴状部分の幅に依存し、0.5mmでは滴が小さすぎて効果がほとんどないが、2mmより大きくなっても膜状部分の液膜厚さの増大のため、効果は減少する。 共存による伝熱促進は膜状部分自身の大きさにも依存する。乱れは境界近くではかなり強いが、内部では減衰する。この様子を径と温度を制御した人工滴を用いた表面温度変動の測定と高速写真観察で確認した。 以上より、滴状凝縮の共存により膜状凝縮熱伝達を促進するには、両部分の幅に最適値が存在し、共に2〜3mmであることが明らかになった。
|