初年度に上流円柱を静止オフセットさせた静特性実験結果をもとに、以下の振動実験(動特性)条件を設定した。レイノルズ数Re_2=5.0×10^4、異径比d_1/d_2=5/30、上流円柱の無次元振動振幅A/d_2が最大で0.25振動周波数は自然発生振動数よりかなり低いfc=0.125〜11.08Hzで上流円柱を主流に直交して正弦振動させた場合(動特性)の下流円柱からの物質伝達率の測定を行うとともに、流れ特性としては振動上流円柱の位置を基準とした位相平均法による統計処理を施した円柱表面静圧分布、変動揚力・抗力特性、2円柱間の速度場等の測定した結果、得られた主たる結論を以下に示す。 (1)下流円柱に作用する時間平均抗力・揚力係数およびストロハル数に対する上流円柱を軸線からオフセットした影響は、オフセット量Y^*/d_2=0.50以下で生じ、Y^*/d_2=0.25において抗力係数は最小、揚力係数は逆に最大となる。(2)静止オフセットの静特性条件下で下流円柱に働く変動抗力および変動揚力をロ-ドセルで直接測定した結果、変動抗力係数はY^*/d_2の変化に対して2円柱間隙X^*/d_1によらず一定(C_Drms=0.1)であるのに対して、変動揚力係数は上流円柱からの放出うずとの相互作用によりY^*/d_2=0.65で最大となり、時間平均揚力と同程度の変動揚力を生じる。(3)上流円柱が主流に直交して正弦振動する場合、2円柱間隙X^*/d_1=5.0、7.9ともに、本実験の振動周波数範囲では上流円柱の振動周波数が下流円柱の物質伝達に与える影響はほとんどなく、上流円柱の静止オフセット実験結果の線形重ね合わせにより局所・平均物質伝達特性が評価できる。(4)上流円柱位置を基準とした位相平均法を用いて上流円柱が正弦振動する場合に下流円柱に働く位相平均流体力特性と静圧分布を振動一周期変化として明らかにし、本実験のように単独円柱の自然発生振動数に比較して低振動数においても、下流円柱に働く変動揚力には上流円柱の振動周波数による影響を残す「位相遅れ」現象の発生することを明らかにした。
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