研究概要 |
昨年度の研究により,アルコ-ル類と水からなる可溶性二成分混合蒸気が水平円管上で自由対流凝縮する場合においては,アルコ-ル濃度及び熱流束によって滴状,縞状,リング状及び膜状の四つの異なる凝縮形態が現れることを見いだしたが,今年度は特にエタノ-ル+水の二成分蒸気について,外径18mmの金メッキ平滑銅管及び外径9.5mmの平滑銅管の二種類の伝熱管を用いて,面の性状及び管径が凝縮形態及び熱伝達に及ぼす影響を実験的に検討するとともに,周囲蒸気に濃度成層がある場合の二成分蒸気の鉛直平板上での層流膜状自由対流凝縮に関して,液膜内の物質移動を考慮して液膜の熱伝達及び物質伝達に関する近似解析を行い,以下のことを明らかにした。 1.表面を金メッキした銅管(φ18mm)の凝縮形態及び伝熱特性はメッキを施していない銅管(φ18mm)と同じであった。また,φ9.5mmの銅管を用いて,より高い伝熱面熱流束の実験を行ったが,凝縮形態はφ18mmの場合と類似であった。 2.実体顕微鏡を用いた凝縮形態の精密観察により,以下の機構により液膜が隆起し,滴状,縞状あるいはリング状になることを明らかにした。(1)外乱により液膜の厚さが不均一となる。(2)主として気液界面のエタノ-ル濃度の影響により液膜の厚い部分の表面張力は薄い部分のそれに比して大きくなる。(3)表面張力差により,液膜の薄い部分の凝縮液は厚い部分へ吸い取られ,厚い部分はますます厚くなる。(4)液膜の厚い部分の流動状態により滴状,縞状あるいはリング状の凝縮形態となる。 3.周囲蒸気に濃度成層がある場合,液膜内に濃度分布が生じること,液膜内の濃度差は流れ方向に増加し,その増加の程度は周囲蒸気と伝熱面との温度が大きいほど大きくなること,局所ヌセルト数はヌセルトの解(濃度成層がない場合)に比して下流に行くほど低下することを近似解析により示した。
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