研究概要 |
本研究は除雪機械や降雪地域の機械構造物に使用される各種金属,非金属材料を対象として,雪が付着するときの表面特性を,雪と材料間の動的相互作用に注目して理論的,実験的に解明することを目的にしている.そこで,まず動的相互作用によって生み出されるものの中で実用上重要である動摩擦力を低温室内で測定した.実験には,研究代表者らによって設計製作された汎用雪氷特性試験機を用いた.供試材料としては,すでに除雪機械等に使用されている材料のほかに,今後使用されていくことが予想される材料を含め,代表例としてチタン板,ステンレス板,カラ-鉄板,及び高分子材料板を用いた.雪と各種材料間に作用する動摩擦力の強さを表す指標である動摩擦係数μはさまざまな因子の影響を受けるが,本年度は,滑雪速度Vに着目しその影響を調べ次のようなことが明らかになった. (1)動摩擦係数μは滑雪速度Vに依存する.雪温度T=0℃の場合は,Vの増加にしたがって次第にμは増加する傾向がある.また,T=ー4℃の場合は,Vの増加にしたがって次第にμは減少する傾向がある. (2)(1)で述べた傾向に関する理論的考察及びトライボロジ-におけるStribecdk曲線を雪と機械構造物間の摩擦状態の考察に適用して得られた知見をもとに,雪をVoigtモデルで表し,試験板表面の粗さに着目したシミュレ-ションモデルを作成した.このモデルを使って理論解析した結果(1)の傾向をほぼ説明できることがわかった. (3)(1),(2)で述べたようにVの影響を実験及び理論の両面から考察した結果,μは表面性状の中でも特に,表面粗さの影響を強く受ける.表面粗さの大きい試験板は,表面粗さの小さい試験板よりμが大きくなる傾向がある.しかし,表面粗さの大きいチタン板が高滑雪速度下で小さなμを示すこともあり,表面粗さ以外の表面性状因子について今後検討すべきである.
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