研究概要 |
数式処理の振動解析の一環として,本年度は主として従来数値処理に重点がある振動解析への応用について検討を行った。 研究では,実験技術とコンピュ-タ技術が結合して急速に普及しつつある実験モ-ド解析への数式処理の適用を検討した。実験モ-ド解析は実験的に得られた伝達関数の生デ-タから測定やデ-タ処理の際に生ずる誤差を除去して固有振動数,減衰係数,レジデュ-,剰余質量,剰余剛性などのモ-ダルパラメ-タを精度よく求めて振動系の数学モデルを構成し,系の応答予測や最適化に応用する方法である。モ-ド解析には種々の数値処理方法が提案されているが,最小自乗法を用いた曲線適合が基本となっている。一般に最小自乗法は数値処理計算の代表例となっており,手続き型言語による高速処理が常識になっている。本研究では最小自乗法をべクトルの内積と考え,数式処理システムの中核をなす豊富なリスト処理機能を用いてモ-ド解析を行うことを提案した。その結果,代表的なモ-ド解析法であるサ-クルフィト法,簡便法,偏分反復法などのプログラムも数式処理システムにより約50行で記述でき,プログラミング効率と見通しの良さの点で数値処理システムよりはるかに勝っていることが示された。また,モ-ド解析では最終的には数値処理を必要とするが,数式処理上でも通常のデ-タ数である200個程度までは実用上問題なく数値処理できることが明らかになった。さらに本研究では多量のデ-タ処理を行う場合を考慮して,数値処理用プログラムを数式処理システムで作成する方法や数値処理システムとの結合方法などについても検討した。以上のように数式処理システムが実験モ-ド解析に有効に利用できることが明らかになったので,冷凍機サイクル配管系の振動特性の解析に応用し,曲管部の振動特性への影響を明らかにした。減衰モデルについて若干の検討を行った上で,結果を学会発表する。
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