研究概要 |
数式処理を用いた振動解析については系統的な研究がほとんどないため,基本アルゴリズム,プログラム方法,適用限界などは十分に分かっていない。そこで,本研究では各種振動解析法に対して数式処理を適用して解析のための基本アルゴリズムを蓄積すること,数値処理を利用した振動との接点を求め,振動解析の自動化・省力化について検討することを目的とした。 研究では,振動解析の基本となる線形振動系の支配方程式の数式処理法から検討を行い,連立1階微分方程式に帰着する新しい解析法を示した。多自由度系ではスカラ-場の勾配を求める機能を追加して系の質量行列と剛性行列を求め,系の動特性を迅速に求める方法を示した。連続体においても振動数方程式の誘導から近似解を得るまで一貫して数式処理システムによって効率良く振動解析が行えることを示した。また数式計算が複雑な摂動法,漸近法などの非線振動解析法に数式処理が有効利用できることを示した。 数式処理をさらに有効利用するためには数値処理技術を用いた有限要素法や実験モ-ド解析などと有機的に結合できることが望ましい。そのため本研究では実験モ-ド解析に数式処理を適用して数値処理と結合した効率的振動解析法についても検討を行った。実験モ-ド解析では系の数学モデルを求めるために必要な最小2乗法と一次方程式の求解がベクトルの内積と行列計算に過ぎないことに着目すれば,数式処理の中核をなすリスト処理機能が応用でき,プログラム効率と柔軟性に優れた振動解析が可能なことを示した。また,この方法を冷凍機サイクル配管系の振動特性の解析に応用して,曲管部の振動特性に及ぼす影響などを調べ,解析方法の有効性を明らかにした。
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