ロケット誘雷実験で開発した音響再現法を自然雷の雷鳴に適用するために、同一の雷スト-ムで同一地点に雷撃した冬季山岳地でのロケット誘雷と自然雷の雷鳴波形を比較した。その結果、自然雷の雷鳴の方が振幅の大きな音響パルスが十倍以上多く含まれ、継続時間も2倍以上長いことが明らかになった。継続時間の長い自然雷の雷鳴から雷放電路を再現するために、相関をとる時間窓の長さを雷鳴波形に応じて変えるのが適切で、その方法として雷鳴波形がゼロレベルと交差する回数からその長さを決定する方法が有効であることを示した。また、自然雷に多い多重雷の再現方法として、支配的な雷鳴を形成する放電時刻をその雷鳴の発生時刻とすることによって、雷撃点近傍の雷放電路を詳細に再現した。 この新たな方法でロケット誘雷実験での両極性多重雷を再現した。その結果から奥獅子吼山頂付近(海抜約1km)の負電荷が最初にロケット誘雷し、その誘雷によって海抜1.5kmから2kmで日本海方向へ水平に広がる正電荷が放電した両極性多重雷であることが明らかになった。 雷鳴観測では、平成3年度の夏季雷は発雷機会が殆どなく富士山5号目及び沼津高専での観測が行えなかった。数少ない機会を逃さないために、針端コロナ電流の変化をトリガ-にした雷鳴の自動観測システムを構築する準備をしている。しかし、石川高専での冬季雷は、近距離での大地放電と雲放電の雷鳴など多くの雷鳴が観測でき、現在その観測デ-タを解析している。
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