沼津高専で観測した夏季雷8例と石川高専と獅子吼高原で観測した冬季雷15例の雷鳴波形を解析した。雷鳴波形の振幅を2乗平均して圧縮することにより、3つのタイプに分類できることを明らかにした。第1のタイプは最初に大きな振幅が到達するもので、観測地点の近くに主放電路が存在する雷鳴である。第2のタイプは振幅が徐々に大きくなり最大になった後徐々に小さくなる山形の音調をしており、遠距離雷鳴や雲放電の雷鳴に多くみられる。第3のタイプはタイプ1と2を複数含むもので冬季雷の雷鳴で観測され、複数の雷雲で同時に雷放電していることを示す雷鳴である。 冬季雷の継続時間は山地(標高650m)では平均18秒、平地では平均20秒で30秒を越える長い雷鳴も多い。雷鳴の卓越周波数は平均140Hzであるが、5km以下の近距離雷鳴は平均150Hzであるのに対して、5km以上の遠距離雷鳴の平均は67Hzと低い。これは枝分れした放電路の音が伝搬中に重畳するのと高い周波数成分が減衰するためであることが明らかになった。従って、卓越周波数から雷放電エネルギーを推定するには雷鳴の発生源近くの周波数を使用する必要がある。 冬季雷の雷放電路は雷鳴による再現から雷放電の中心高度は1.5kmから2kmを水平に伸びることが明らかになり、この結果は高度別のレーダエコーとも一致している。雷活動の活発な高度が低く水平に伸びる放電路が存在するため、冬季雷では複数の雷雲で雷放電が生じやすく、多地点同時雷撃雷が多く発生する理由であることが明らかになった。
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