研究概要 |
本研究では、室温で形成できる光機能性超微粒子を分散させた薄膜を試作することを目的として、大きな磁気光学効果を示すフェライト超微粒子の作製と作製条件の確立、バインダーの探査および分散膜の作製を行い、以下の結果を得た。 1.分散膜用フェライト超微粒子の作製条件の確立と特性 大きな磁気光学効果を示す透明な強磁性酸化物であるBi置換鉄ガーネット、Ce置換鉄ガーネットの超微粒子を共沈法により作製し、透過電子顕微鏡観察およびX線回折測定より、これらの超微粒子が700℃程度の低い熱処理温度で平均粒径約50nmを持つ単相ガーネットとして結晶化することを明らかにした。得られた超微粒子は、バルク結晶に比べ約半分の低い飽和磁化およびファラデー回転を示し、Al,Bi置換Dy鉄ガーネットではバルク結晶に比べ大きな補償組成のずれが観察されたが、これらはいずれも四面体位置の鉄が部分的に欠損することに起因することを初めて明らかにした。 2.分散技術の確立とバインダーの最適化 均質な塗布膜を作製するためには超微粒子を均質に分散させた溶液の作製が必要となる。これにはバインダーに適した界面活性剤の使用及び分散時にサンドミリング装置を用いることが非常に有効であった。また、バインダーとしては、分散膜の光散乱を低減するために分散微粒子に整合する高い屈折率を持つものが要求されるが、固化後のバインダーの硬度が高く微粒子に大きな保磁力を誘起する高屈折率バインダーとしてTiO_2-SiO_2系材料が有望であることを明らかにした。 3.光学的に透明で垂直磁化を持つ超微粒子分散膜の作製 Bi,Al置換Dy鉄ガーネット超微粒子を無機系および有機系バインダーに分散した光学的に透明な薄膜を初めて作製することに成功し、これらがSEM観察より良好な膜表面平滑性を持ち、磁気光学素子への応用上重要な垂直磁化を有することを明らかにした。
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