光学機能材料・電子材料として非常に注目されているポリジアセチレン(PDA)LB膜の構造制御と新機能について研究を行った。PAD LB膜はジアセチレン・モノマ-LB膜を累積し、その後に紫外線照射により重合して得られる。すでに、PDA LB膜は青色相と赤色相の間で可逆的な色相転移を示すことや、作製時のモノマ-LB膜を累積した後の重合前に、熱処理を行うことで、従来の報告にない吸収特性を示すPDA LB膜が得られることを報告した。本研究では、累積条件や前熱処理等の条件を細かく変化させて、PDA LB膜の層構造や結晶性、吸収特性、可逆的色相転移特性などについて詳しく調べた。 X線回析や吸収スペクトルの測定から、PDA LB膜の特性がジアセチレン・モノマ-の側鎖の長さや水温等の累積条件に強く依存し、また、前熱処理によってもPDA LB膜の特性が大きく変化した。10ー8PDA LB膜では60℃近辺の前熱処理で700nmにピ-クを示す新しい青色相のPDA LB膜が得られた。一方、13℃で累積した12ー8PDA LB膜や14ー8PDA LB膜では前熱処理で従来の青色相(640nm)の吸収が減少するのみであった。これらの結果は、前熱処理によりLB分子がより秩序層構造を示し、ジアセチレン分子の側鎖が垂直方向により配向することに起因していた。また、前熱処理を行ったPDA LB膜では従来よりも強い色相転移の可逆性を示すことが明らかになった。得られたPDA LB膜の色相転移の可逆性が熱やレ-ザの照射によっても調べられた。 PDA LB膜では側鎖長や作製条件によって、その構造や光機能を制御することが可能であり、応用上重要であると考えられる。
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