研究概要 |
本研究は,真空中のロ-ル超急冷法で作製される板厚3〜10μmの極薄のCo基アモルファス磁性合金超薄帯の,製造方法および磁区構造を詳しく検討し,MHz帯の高周波領域での磁心損失の一層の超低損失化と初透磁率の周波数特性を向上させることを目的として2カ年間実施された 本年度は,熱処理条件と合金組成を種々変化させた場合の高周波磁気特性に及ぼす効果を検討した。その結果,幅方向磁界中熱処理を施すとMHz帯の高周波領域での特性が30〜50%程度さらに改善されることが明らかになった。明らかになった主な点はつぎのとおりである。 得られた高周波領域の磁心損失の最小値は,(FeーCoーCr)_<77>(SiーB)_<23>,および(FeーCoーCr)_<79>(SiーB)_<21>の試料薄帯の場合で,最大磁束密度が0.1Tで周波数1MHzのとき,700(mW/cc)である。この値は,他の高周波用磁心の1/3〜1/4で,世界最小である。さらに,初透磁率は,1MHzで13,000,10MHzで2,200の極めて高い値が得られた。これは,従来の実用アモルファス磁心に比べ1桁高いものである。 また,Kerr効果による磁区観察の結果,誘導磁気異方性を十分抑制した薄帯については,歪取り熱処理によって数μm〜10μm程度の微細な磁区が多数形成されていることを見出だした。さらに,幅方向磁界中熱処理を加えた薄帯においては,薄帯幅方向にほぼ平行な磁区構造が形成されていること,合金組成によって磁区幅が変化することを見出だしたこの結果,幅方向磁区の細分化がMHz帯の磁気特性の改善・向上にきよしていることが,定性的ではあるが,明らかになった。 以上述べたように、本年度の研究計画・目的とした点はほぼ達成できた。
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