研究概要 |
波の位相速度が周波数によって異なる速度分散現象は媒質自身が非分散であっても観測される。例えば音波の伝搬経路がチュ-ブのように閉じた境界で限られていて、その断面積が距離と共に変化していたり音の存在で膨縮するような場合である。一方,音波の伝搬機構は本質的に非線形である。特に振幅が大きくなると波形歪といった非線形特有の現象が顕著に生ずる。若しこのような音波が分散性経路内を伝搬すると、波形は複雑に変化するばかりでなく,非線形性による波面の突っ立ちが分散効果で抑制され,時として波はその形を変えることなく安定に進む。本研究は,分散効果と音波吸収効果が共存する弾性チュ-ブを対象に,その内を有限振幅音波が伝搬する際の機構を解明するものである。解析においては波長がチュ-ブの内径に比べて十分大きいとした平面波伝搬を仮定する。また,チュ-ブの径方向振動が微小で音圧に局所作用することや,コンプライアンス,質量及び機械抵抗の三つの機械素子の直列回路で等価的に置換できることを前提とする。シリコ-ンチュ-ブを用いた実験において次のことが判明した。 1.測定周波数範囲において理論展開に伴う仮定,前提及び近似は満たされた。2.基本波に寄生する衝撃波(このような波を衝撃波と言えるか不明であるが)が観光された。3.分散性が高調波の発生,成長を抑制し,音波の非線形吸収を弱める。4.理論的には低周波音波の非線形挙動はBKdV(BurgersーKortewegーdevries)の式で記述できる。
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