| 研究概要 |
弾性の特性をもつチュ-ブ内を音波が伝搬すると音の圧力によって周波数に依存した壁面振動が生じ,幾向学的速度分散が発生する。一方,音波の振幅が大きくなると空気,水といった弾性媒質の非線形性によって波形は伝搬とともに著しく歪む。この速度分散性と非線形性の競合作用に基づく音波パルスの孤立化の可能性を問うため,以下のような実験を試み,理論との比較検討を行った。即ち,シリコ-ンゴムチュ-ブ内で任意のパルス音波をシンセサイザの利用により発生させ,その振幅の大小で伝搬に伴う波形の変化,波面の様子を観測した。その結口,ソリトン理論で明らかにされているように非線形性と分散性が競合し,時として安定に伝搬しうることが分った。しかしながら,チュ-ブの径方向を,振周波数付近において音波エネルギ-は熱散免し,音波分振幅は小さくなり非線形性は弱められ,分散性がパルス音波の伝搬機構を支配することが判明した。以上の結果はチュ-ブの振動と音波のカップリング(局所作用を返定)を考慮した理論計算とよく対応し,理論の妥当性を得た。また,非線形性により発生する高調波は独自の音速で伝搬するため,ある周波数成分の伝搬特性にビ-ト現象が強く現われるが,これはチュ-ブの共振特性さのものに基づくことも明らかにされた。なお,共振付近での音波エネルギ-損失はあるものの,分散性を利用すると衝撃波の発生を弱めることができ,アルミパイプといった剛管内よりも一層大きな振幅の音波が送波可能である。
|
