研究概要 |
動画像のフィルタリングのための高速な再帰形2次元ディジタルフィルタをマルチプロセッサシステムで構成する方法と,計算効率の良いアルゴリズムを開発した。画面を格子状に分割し,その一つの領域をさらに格子状にPXQサンプルの複数のブロックに分割し,各ブロックをそれぞれ1箇のプロセッサが処理し,左下のプロセッサから右方並びに上方のプロセッサへ水平ならびに垂直状態変数を渡す。すなわち各プロセッサは相互に同期を取りながら処理を行う。処理にまRoesserの状態空間モデルを用いた。各プロセッサは処理が終ると,上方の領域の対応するブロックの処理へ移り,画面の最上方の領域の処理が終ると,最下右の領域の処理へと移り,また上方へと移って行く。各プロセッサが状態変数入力待ちで遊びを生じないための垂直,水平タイミング条件を導いた。この条件下で,要求されるサンプリング速度と,プロセッサの一演算時間,プログラムステップ数,所要プロセッサ数との関係を導いた。一方一つのブロック処理については,1サンプル当りの演算数を減らす点と,演算の並列度を上げ処理速度を上げる点の二つに着目し,既知の二次元ブロック処理法と,新しく考案した零状態・零入力応答法,零状態ブロック処理法,擬似零状態ブロック処理法の4種のアルゴリズムをブロックサイズと1サンプル当りの演算数より比較し,擬似零状態ブロック処理法が広いブロックサイズにわたって,一般形,分母分離形伝達関数の両者について,演算量が少なく優れていることを見出した。複数箇のプロセッサエレメントを搭載した1つのチップが,1つのブロックを処理する場合のサンプリング速度と所要チップ数についても調査した。チップ数だけの並列処理を行うが,入,出力は数命令分の時間がかかるため,内部処理量の多い,すなわち伝達関数の次数が高い場合(6以上)に,チップ数に比例したシステムの処理速度の上昇が得られる。
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