研究概要 |
先ず、磁気圏プラズマ波動に対する波動分布関数方位測定方式の研究の進展を述べよう。我々が開発した波動分布関数方式は従来のゴニオメ-タや電磁界解折法のように単一平面波を仮定していないため、電離層下端での波動エネルギ-密度分布を導出でき、電離層透過域が極めて広い時や複数のダクトが存在する時には有効である事が証明されている。本方式は観測されたスペクトル行列(観測可能な電磁界三成分(B_x,B_y,E_z)の自己パワ-及び相互パワ-スペクトルから成る)に対して最大エントロピ-法を適用した逆変換であるが、画像の妥当性を評価する客観性に欠ける欠点がある。そこで、本年度我々は最適画像を得るために、人工知能の分野で用いられているフィリップス正則化による逆変換とGeneralized Validation(GCV)との併用により客観性のある最適画像の導出方式を開発した。その結果、一波源の時にはGCV最小の基準が極めて有用である事が判明した。しかし、二波源の場合にはGCV最小よりも幾分小さい正則化パラメ-タにて最適画像が得られた。これは正則化法では全体を滑らかにしようとする働きがあり、二つの隣接した波源を分離したいという要求とは相入れないためである。この点の解決が今後の問題である。更に,実際のホイスラデ-タに対して上記の方式を適用すべく、1991年1月に関東地方での三観測点(群馬県沼田、茨城県柿岡、千葉市館山)において電磁界三成分の広帯域波形観測を行い、有用なデ-タを得ている。来年度にはこれらのホイスラデ-タに対して新らたに開発した方式(フィリップス正則化+GCV)と従来の最大エントロピ-法との比較検討を行う。これら三点での観測から本方式の有効性に関する実験的評価もはじめて可能となろう。
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