研究概要 |
本年度の研究目標は,以下の1.〜3.であった。 1.前年度からの課題:乱流媒質中のレ-ダ-断面積の算定とホログラフイックレ-ダ-の高解像化に関する総仕上げ。 2.本年度の新規課題:合成開口レ-ダ-のレンジ方向分解能に関係する乱流媒質によるパルス波形の歪と広がり。 3.上記1.,2.で得られた結果の取りまとめと研究成果報告書の作成。 課題1.については,この問題を定量的に評価する方法を前年度で確立したので,その方法に基づいて具体的モデルに対して数値解析を行ったところ,(1ー1)標的のサイズaが乱流中を伝搬してきた入射波の空間コヒ-レンス長lに比べて充分小さいときは,通常の後方散乱強調現象によりレ-ダ-断面積は,入射波の偏波に拘らず,自由空間中に存在する場合に比べて約2倍となる。(1ー2)a〜lとなると,レ-ダ-断面積が標的の共振波長近くで異常な特性を示す。これについてはより詳細な検討を要する。(1ー3)以上の結果は凸状物体に対する限られた数値解析結果であって,凹状物体を含めて今後一段の研究が必要であり,新たな事実が解明される可能性が強く,将来の高性能レ-ダ-開発に本課題は不可欠である。(1ー4)空間情報を各点で受信してホログラムを作成する際に,受信強度にのみ単に重みを付けるだけで,強い乱流によって埋れた再生像が殆ど歪みなく修復できることを定量的に明らかにした。 課題2.について理論解析を行い,FMチャ-プ波のパルス圧縮法が極めて有効であり,理想的なフイルタを用いれば乱流の影響を受けないことを明らかにした。理想からのずれの影響について現在検討中である。 以上のことから,所期の目的がほぼ達成されたので,研究成果報告の作成を現在行っている。また,成果の一部はいくつかの国際会議,論文誌等を通して順次公表する予定である。
|