研究概要 |
本研究は,M系列などの2値系列よりも相関特性の良い実数直実擬似雑音系列で情報を符号化・変調し,逆に復調・復号化する具体的な方式を研究し,性能の良いスペクトル拡散通信方式の実用化を促すことを目的としたものである。本研究は来年度も引き続き行う予定であるが,本年度の研究実績を以下に要約する。 1.変復調方式の検討 一定のシフト範囲で無相関となる系列であって,絶対値が小さく長さが2のべき乗となるものを開発し,送信器の電力利用効率を高め,相関処理に高速フ-リエ変換が利用でき,而も一定のシフト範囲で無干渉な多重伝送に利用できるようにした。振幅変調,パルス幅変調,位相変調および相関処理をディジタル的に実行できる方式を検討し,量子化雑音が白色ガウス雑音と同様に処理利得によって抑圧できることをシミュレ-ションで確認した。又,伝送帯域,基底帯域での相関処理を検討した。 2.変復調方式の予備実験 別途校費によって設置した任意波形発生器(横河電機(株)製AG1200,139万円)および本体研究費によって設置したディジタルオシロスコ-プ(横河電機(株)製DL1200,88万円)を用いて,50kHz付近の超音波伝送路,帯域通過模擬伝送路,DC〜5kHzの低域通過模擬伝送路でのスペクトル拡散通信の予備実験を能率良く行うことができた。この実験では,システムは同一クロックに同期させ,全帯域での相関処理,キャリヤによる復調後の基底帯域での相関処理を行い,相関出力は理論およびシミュレ-ション通りの高いSN比(系列長256のとき60dB以上)で得られた。又,多重伝送の実験でも希望波と不要波が高いDU比(2チャネル伝送のとき60dB)で得られた。 以上の実績より,次年度の研究の遂行に十分な見通しが得られた。
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