研究概要 |
本研究は,M系列などの2値系列よりも相関特性の良い実数直交擬似雑音系列によって情報を符号化・変調し,逆に復調・復号化する具体的な方式を研究し,性能の良いスペクトル拡散通信方式の実用化を促すことを目的として,平成2年度から本年度まで行われた。前年度は,実数直交擬似雑音系列による振幅変調,パルス幅変調,位相変調の符号を構成し,相関処理の基礎的実験を行った。本年度は,昨年度確立したシステムに基づき実際にデ-タを伝送するときのシステムの性能評価実験を行い,本研究の総括を行った。以下に,本年度の研究実績を要約する。 1.システムの性能評価実験 一定の範囲内の遅延で無相関となり得る符号として振幅変調,パルス幅変調の符号を特定の量子化ビット数で発生し,帯域通過形のアナロブ伝送路を通し,ディジタル相関処理を行うシステムで実験を行った。フロントエンド及びバックエンドに相関器を置く構成で,伝送路の帯域幅の相関出力波形,処理利得への効果はほぼ理論通りであった。2チャネルの多重符号に広帯域ガウス雑音を付加してデ-タ復調実験を行い,必要信号対不要信号比(DU比)の改善比,ビット誤率はほぼ理論値に近い値を示した。 2.実数直交擬似雑音系列を用いたスペクトラム拡散変復調方式の総括 周期長が2のべき乗数で絶対値が小さく,一定のシフト範囲で無相関な実数直交擬似雑音系列で振幅変調,パルス幅変調の符号を作り,高速フ-リエ変換を介したディジタル相関処理を行う変復調システムでは,一定の遅延範囲で高い混信除去比(本実験では60dB以上)が得られた。 本方式は,同期式又は準同期式のスペクトラム拡散通信に最適であるが,符号の非周期相関関数の絶対値はM系列符号の場合よりもむしろ小さいので非同期式のスペクトラム拡散通信にも適用可能と思われる。
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