有限体上の射影空間における代数曲線によって定義される代数幾何学符号は、近年世界的に盛んに研究が進められている誤り訂正符号の重要なクラスである。特に、これらのよい誤り訂正能力と符号化率をもつ代数幾何学符号を実用的なものにする上で、効率的な復号法を見いだすことが重要な課題の一つとなっている。昨年度の研究において、本研究代表者が以前に2次元線形フィ-ドバックシフトレジスタの最簡構成問題の解を求めるために考案した2次元BerlekampーMasseyアルゴリズムが代数幾何学符号のサブクラスをなす2次元巡回符号の特定のものに対する復号法として有効であることを明かにした。その手法の基本的な考え方は、誤りを含んだ受信語に対するシンドロ-ムを2次元配列の形で与え、それに2次元BerlekampーMasseyアルゴリズムをうまく適用することである。本年度は、その成果を踏まえて、最近(旧)ソ連の研究者が提案した復号アルゴリズムをより高速化する方法を導入した。それは、本来の2次元BerlekampーMasseyアルゴリズムが2次元配列をスキャンする方向に関して有する自由度を生かして、やはり最近日本人研究者により見いだされた新しいクラスの代数幾何学符号の効率的復号法を実現するものである。また、シミュレ-ションによって本復号法の誤り訂正能力および復号の計算量を調べ、実用化に際しての有効性もいくつかの具体例に対して確認した。本研究の成果は、国内・国外の数人の研究者が本研究代表者のアルゴリズムを代数幾何学符号に各サブクラスに適用して、その有用性を明かにしていることと相俟って益々本手法のより広い意味での重要性を示唆するものと考えられる。さらに、目下は検討が進んでいない符号クラスに対して、本方法を適用するための2次元BerlekampーMasseyアルゴリズムの各種の拡張も併せて実現した。
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