現在の光通信システムは、光の持つショット雑音によって、その受信感度が制限されている。これまでショット雑音は、光子のランダムな到来に起因するもので、全く制御できない本質的な雑音と考えられてきた。これにたいして本研究は、光子数の揺らぎをこれと相関のある別な物理量により非破壊的に読みだし、さらにこの物理量を誤差信号とするフィ-ドバックもしくはフィ-ドフォワ-ド制御システムにより、光子数揺らぎを抑圧するシステムを開発することを最終目標とした。 このために、光パラメトリック発振器と半導体発光素子を用いた方法について検討を行った。光パラメトリック発振器については、KTP結晶を用いたモノリシック共振器型発振器を設計・試作した。しかし、低閾値での発振は実現されたものの十分な発振安定度は得られず、サブショット雑音状態を達成するには至らなかった。次に、半導体発光素子の量子雑音に関する理論を展開し、サブショット状態を実現するための条件について検討した。この解析に基づいて、発光ダイオ-ドを用いた、ショット雑音低減の実験を行った。この結果、ショット雑音レベルより0.5dBの雑音抑圧が実現された。また、定電流駆動された低閾値半導体レ-ザを高注入動作させることにより、ショット雑音以下2dBの雑音レベルが実現された。 これらの方法とは全く異なる考えに基づく受信感度改善方法についても、研究を行った。これは、当初の研究計画には含まれていなかった研究課題である。この方法では、受信端で光の状態制御を行うので、光源の量子状態や伝送路の損失のいかんに関わらず、ショット雑音限界を打破できる。光源の量子状態を制御する方法に比べて、その実用的意義は大きいと考えられる。
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