研究概要 |
球面状の集束音源によって単一周波数の正弦波音波を発生させると、音波が焦点に向かって伝搬するにしたがい、主に媒質の弾性的非線形持性を反映してその音圧波形がひずみ、高調波を発生する。本研究では、前年度に計測等の工学的応用に便利なガウスビ-ムの場合を解析した結果に基づいて、小体積の液体試料の非線形パラメ-タB/Aを測定する方法を提案した。すなわち、集束度の比較的大きな音源を用い、水中に形成された集束ビ-ムの焦点を跨ぐ小さな領域を試料で置き換えたときに、その試料後方で基本波および第2高調波の振幅・位相の変化を観測する。その結果から、本研究で新たに定義したパラメタR_Fの値を算出すると同時に、種々のB/Aに対応するR_Fの理論値を計算し、実験値に最も良く一致したR_Fを与えるB/A値を得る。本研究では、1.9MHzの基本波周波数を用いたとき、体積0.5mlの生体軟組織を含む液体試料のB/A値が測定可能であることを実験的に検証した。R_Fの理論値の計算に必要な試料の線形持性(ρ,c,α)も、同じく集束音波を用いて測定する。音源の集束度をより高くすれば、より小さい試料の測定が可能になる。また、同じ集束度でも、基本波周波数を2倍にすれば試料の体積を(1/2)^3=1/8倍にすることができる。これらの検討では試料の吸収係数に周波数の2束則を適用していないが、試料の速度分散は考慮されていない。分散性を考慮すると、回析とも競合するが、第2高調波の振幅・位相が異なった値となり、B/A測定に誤差を生じ得ることを示し、その誤差の大きさを明らかにした。医療診断の精密化を目指した研究課題のひとつであるB/A特性の系統的な研究・評価のための、組織をミクロにとらえることのできるB/A測定法として有望である。この特長を活かすため、本法を超音波顕微鏡に適用した、理論的・実験的検討が今後の研究代題と考える。
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