| 研究概要 |
本研究では,焦点近傍に置かれた液体あるいは固体の層に入射する集束音波の非線形音場について理論的、実験的に解析している。また、計測への一応用も提案し,実験的検証を行っている。音源で正弦波である球面状の集束音波を想定している。音源の振幅が径方向にガウス分布をしている場合,高調波成分もまたガウス分布になると近似すると,音響ビ-ムを支配するKZK方程式の解法が大幅に簡易化される。その解析は実験結果をよく説明する。ガウスビ-ムの物理的・数学的特性の単純性は非線形伝搬を音響計測に応用する際に有用である。集束音場に固体の薄板を挿入すると、ラム波を励振する条件を満たす斜入射成分が固体板を透過するので、反射波のビ-ム形状が入射波の形状と異なるようになる。反射前後で発生する非線形高調波がこれに重畳される。集束音場に液体層を挿入すると、(1+B/2A)/ρc^3の値が大きい液体試料では比較的小さな音源レベルでも大きな高次高調波が現れる。この原理を応用し,小体積の液体試料の非線形パラメ-タB/Aを測定する方法を提案した。すなわち,集束度の比較的大きな音源を用い,水中に形成された集束ビ-ムの焦点を跨ぐ小さな領域を試料で置き換えたときに,その試料後方で基本波および第2高調波音圧の振幅・位相の変化を観測する。その結果から、本研究で新たに定義したパラメ-タR_Fの値を求める。これを理論値と比較して,実験値に最もよく一致するR_Fを与えるB/A値を得る。試料の速度分散による本方法の測定誤差についても議論している。本方法では,音源の集束度をより高くすれば,より小さい試料の測定が可能になるが,基本波周波数を高くしても試料の体積を小さくできる。したがって,高周波超音波を用いることにより,本方法は生体組織等の試料のB/A特性を微視的に研究するための研究手段として発展させ得る可能性がある。
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