1.新しい原理に基づく角速度センサを考案し、実際に試作して評価実験を行なった。このセンサはそれ自体では角速度の向きを判別できないが、現存の角速度センサに比較して構造が単純という特徴を有する。 2.カメラを回転運動させて外界を動く対象物を視野内に捉える実験を行なった。運動モデルとして、人間の眼球運動でいうサッケ-ド運動(跳躍性運動)とパ-シュ-ト運動(追従性運動)を、視線位置と視線速度に着目して記述したものを新たに用い、 (1)対象物体が視野の中央付近にある場合は視野上で観測される物体の速度偏差を減少させる (2)対象物体が視野内の周辺にある場合には視野中心からの位置偏差を減少させる という動作によりこれら二種類の運動を同時あるいは単独で安定に生じさせることができた。 この結果から、通常の追従視覚系で行なわれているパ-シュ-ト性の運動に加えてサッケ-ド性の運動を適切に組み合わせれば、たとえば、カメラが対象物を見失いそうな時は対象物の視野内での位置を、カメラが対象物に追従している期間には対象物そのものを計測できることが示せた。これは、その時々で最適な動作を自律的に選択するという知能化センサの特徴が具体化されていると言える。 3.不規則な外乱によりカメラを振動回転させ、この回転量を角速度センサで検出して振動を補償できるようなシステムを構成した。実験では視線制御系は平衡覚情報のみに基づいて視線を動かし、視覚系は視覚情報のみから対象物の位置を抽出するだけで全体として自身の運動に惑わされずに対象物の絶対的な位置が計測できた。 これは、視覚系と平衡覚系と眼球運動系をそれぞれ独立に動作させ、上位の知覚レベルで適切に情報の流れを統合することで融合動作が行なえる例であり、このような計測システムの構成法はセンサフュ-ジョンの実現に有効であると考えられる。
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