本研究においては、道路管理におけるアスファルト舗装の路面性状調査デ-タを利用してデ-タファイルを作成し、経年的な舗装路面の破損の進行を確率論的に分析を行い、さらに補修の経済性を評価するシステムを開発する。本年度においては、この破損遷移確率モデルとしてマルコフ連鎖モデルを用いることによって、アスファルト舗装の破損遷移を評価するシステムを構築した。 本研究で使用した路面性状調査デ-タは、建設省が東北および九州管内の一般国道全路線について実施したものである。本研究ではこれに道路交通センサスから得られた交通デ-タを補足して、デ-タファイルを作成した。 このデ-タファイルを用いることによって、アスファルト舗装の路面状態を5ランクで評価した場合のマルコフ遷移確率マトリックスを、次の2条件に関して、国道の路線別、交通区分別に作成した。 (1)路面の補修が行われない場合の遷移確率マトリックス これは舗装路面が、その終局的破損状態のランクに達した場合には他の状態に移行することはなく、マルコフ連鎖における吸収状態に達したとする。この場合の遷移確率マトリックスを用いることにより、舗装がある破損ランクに達する平均寿命、信頼性確率などを求めることができた。 (2)補修が行われる場合の遷移確率マトリックス 実際の舗装は、舗装がある破損状態になると補修が行われる。そこで、その補修実績に基づいた補修確率を導入することによって、補修実績を考慮した遷移確率マトリックスを作成した。これにより舗装路面の定常状態確率ベクトルを求め、実際の舗装の定常確率と比較することにより本モデルの検証を行った。
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