本年度の研究計画に対応させた研究実績の概要は以下のようである。 まず、自然環境に近い1日1サイクルの緩速凍結融解を10サイクル与え、試験開始時の圧縮強度と耐凍害性との関係を調べた試験(供試体は試験時まで封緘養生)では、(1)緩速凍結融解試験中に生じる劣化は、過去の研究で多く利用されている圧縮強度や縦動弾性係数の値にはほとんど反映されず、緩速凍結融解試験後に行った急速凍結融解試験結果にその影響が現われること、(2)凍害がほとんど生じないことを保証する所要圧縮強度は、水セメント比が45、55および65%の場合、それぞれ、約70、140および180kgf/cm^2であり、水セメント比によって著しく相違すること、等の新たな知見が得られた。この結果は、寒中コンクリ-トの養生規定を、水セメント比の相違に関わらず、一律に規定している現行の指針類の不備を指摘すると同時に、養生規定の数値についても見直しが必要であることを示唆するものである。 上記の緩速凍結融解試験において劣化が生じた供試体を20℃の水中に約3ヶ月放置し、劣化の修復を調べた試験では、5kgf/cm^2程度で緩速凍結融解を与えたものも含め、全ての供試体の場合に劣化が完全に修復されることが確認された。しかし、実際の自然条件下での劣化修復効果は、この試験におけるより小さいと考えられるので、この点については更に検討が必要である。 長さ変化の測定値を利用した若材令コンクリ-トの耐凍害性評価手法に関しては、(1)凍結融解サイクル数と残留膨張ひずみの対数値との間にきわめて良好な直線関係が存在すること、(2)この直線の匂配を表わす係数を含む量(ひび割れ膨張係数と呼弥)が、コンクリ-トの配合、養生条件、その他に関係なく、耐凍害性を評価する有用な指標となり得ること、等を見い出した。
|