局在引張ひびわれは、梁の剪断、版や壁の温度変化や乾燥収縮、またアンカ-の引抜き、などにおいて、進行性のひびわれとなる傾向かある。この場合のひびわれ進行の計算方法は確立されておらず、鉄筋の補強のための理論が不十分である。線形力学による応力拡大係数をひびわれ進行の規準とする仮説により、種々の現象の計算による模擬を行った。これによると、梁の剪断による斜め引張りひびわれ、版や壁の温度変化や乾燥収縮によるひびわれ、またアンカ-の引抜きでアンカ-プレ-トの埋め込み深さや縁端距離が異なる場合のひびわれの進行等は、実際の挙動をほぼ模擬できることが示された。梁の剪断やアンカ-の引抜きについては、ひびわれの進行経路や複数のひびわれの発生が模擬できた。版や壁の温度変化や乾燥収縮によるひびわれについては、その発達を鉄筋が抑制し、発生を分散することにより、ひびわれの幅を狭める鉄筋の効果が模擬できた。アンカ-の引抜きについては、ひびわれ進行時のひびわれ先端周方向単位長さあたりの荷重が、3次元の場合に2次元の場合より大になることが、20節点の一般立体有限要素により構成した軸対象3次元の構造で示された。応力拡大係数の材料特性値を一定とした場合のひびわれ進行限界の荷重の精度はまだ不十分であるが、種々の現象について鉄筋による補強を設計するために想定するひびわれ進行の状態の予測に有用であると思われた。
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