研究概要 |
本年度は,主として流砂の非平衡状態における河床表層砂の粒度変化に関する研究を行なった。すなわち,ダム下流部における河床低下とそれに伴なう河床表層砂の粗粒化現象の特性を実験的に明らかにするとともに,粗粒化の機構に関する考察を行った。得られた主な結果は,以下に示す通りである。 1)河床表層砂は河床が顕著に低下しているいわゆるrotational degradationの間も時間的に粗粒化するが,平均粒径の流下方向の変化は顕著でなく,河床全体に亘ってほぼ一様に粒度変化している。 2)上記の河床低下中の表層砂の粒度変化は,粗砂・細砂の鉛直方向の分級に基づくものとして,移動層内での砂の鉛直分級モデルを提案した。このモデルは彬合砂層に振動を与えれば細砂が空隙を埋めるように鉛直下方へ沈み込み,粗砂が表層に集まるという通常みられる分級現象が流水下の河床表層でも生じるという発想に基づいて考察したものである。このモデルによって,河床低下時,流砂が活発に移動しているような状態ほど粗粒化の程度が大きくなるという実験事実もよく説明できる。 3)河床が停止した時には既に河床表層砂の粗粒化は最終的な粗粒化の80〜90%まで進行しており,その後のいわゆるparallel degradation時における粗粒化はわずかである。 4)河床低下がほぼ終わり粗砂の移動がなくなった以降は,河床表層から細砂のみが抜け出しさらに粗粒化が進行する。この静的粗粒化は上流側から下流側へ伝播してゆく特性を持っているが,粒径別流砂の流下方向の連続式を考慮した従来の水平分級を考えることで説明できる。
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